ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~


 いつもはディオンの背中に乗って移動するだけの日々だが、今日は全身運動のオンパレード。加えて、聖女の力もフル活用だ。疲れるのも無理はない。

 自覚してしまえばなおのこと疲労を感じて、ふわぁ、と欠伸が零れた。

 いまにも瞼がくっつきそうになりながら、ルイーズはおねえさんのもとへ向かう。

「……おねえさん」

 頬にかかっていた彼女の短い赤髪をそっと指先で払いよけ、布団代わりに被せていた花弁を首もとまで引きあげてやる。

「だいじょうぶ。もう、だいじょうぶだよ」

 知っている。命の灯の儚さを。

 知っている。奇跡の力も、その脆さには意味をなさないのだと。

(生きて、おねえさん。絶対に、生きて。死んじゃダメだよ)

 どんなに大切でも、どんなに願っても、命は簡単にこの手から零れゆくのだ。

 だからルイーズは抗わずにはいられない。

 まだ救える命を諦めるわけにはいかない。

 でなければ、母を救えなかった自分を、一生恨むことになってしまうから。

(ねえ、お願いだから……ルゥの前で、死なないで)

 いっそ懇願するように心のなかで祈った直後、ルイーズは耐えきれず眠りの世界へと誘われた。



「姫さま、ただいま戻り──」

 残っていた花弁をすべて抱えて地下室に降り立ったディオンは、しかし途中で口をつぐんだ。すうすうと寝息を立てている主の姿を認めて、ふっと相好を崩す。

(……眠ってしまわれたのか)

 名も知らぬ赤髪の女性の傍らで、彼女の身体に突っ伏すようにして眠っている。