その表情は、いまにも息絶えそうなルイーズとは正反対で嬉々としている。
「姫さまっ! 終わりました! 泥、すべて外に出せましたよ!」
「わあ……うん、あの、ありがと……」
いまだ狼姿のディオンを見て、ルイーズはひくっと頬を引きつらせた。
いつもの美しいブルーシルバーの毛並みはどこへやら、ディオンは全身を泥で真っ黒に汚していた。なんとなく、はしゃいで水たまりに飛びこんだ犬っぽい。
(ここほれわんわん……)
しかし、達成感でハイになっているのか、やたらと目をきらきらさせてルイーズを見てくる。ほめてほめてっ!という心の声が聞こえた気がした。
「すごいね、ディー。いーこいーこ」
「はい、頑張りましたとも! 見てください、姫さまが万が一にも汚れてしまわないよう、すみずみまで泥を残さず掘り返しましてですねっ」
「うん。とりあえず、ほら、ばっちいから……あっちできれいにしてきて。ザーベスの茎のお水、使っていいから」
「……えっ、ばっちい……」
そのひとことが、ディオンはショックだったらしい。輝いていた顔から一転、しょぼしょぼと身を小さくしたかと思うと、最終的にへにょんと耳が垂れた。
(……あとで、もっかいいーこいーこしてあげなきゃ)
よれよれと歩いていく背中が悲しそうで、ルイーズは内心冷や汗を流した。
とはいえ、いますぐ慰めている時間の猶予はない。
すでに鳥肌が走るくらいには、空気が冷え込み始めているのだ。
「急がなきゃ」
さきほど短く斬ってもらった葉部分に繋がる細めの茎をずるずると引きずり、ルイーズはディオンが掘ってくれた沼の跡地へ持っていく。



