「飲まないよ? あのね、沼を掘り返すの。そこに穴ができたら、屋根を作って、カマクラみたいにするから」
はあ、と目を瞬かせるディオン。
おそらくイメージできていないのだろう。
この様子だと、〝カマクラ〟もこちらの世界には存在しないのかもしれない。
「急がなきゃ、日が暮れちゃう。作りながら説明するね」
「そうですね。言われた通りに動きますので、指示をお願いします」
「うん」
そこからのルイーズたちははやかった。
まずは数輪のザーベスを伐採し、聖光力ですみずみまで毒素を抜き取る。
続けて、比較的きれいな丸い形をした毒沼を選びまるごと浄化。沼に聖光力が効くのかという憂慮はあったが、これもザーベス同様問題なく適用範囲だった。
「ディー、ここ掘って」
「掘っ!?……い、いえ、わかりました。このディー、姫さまのためならば、たとえ泥だらけになってもかまいませんとも。お任せください!」
「ありがと。大好き」
「ぐはっ……あ、ありがたき幸せです姫さま……」
狼姿のディオンにひたすら沼を掘ってもらっているあいだに、ルイーズはザーベスの花弁を一枚ずつ茎から剥ぎ取る作業に移る。
しかし、これが思っていた以上に大変だった。なんといっても大花──一枚の花弁の大きさは、ルイーズの全長を悠々と超える。
花弁ゆえに重さ自体はそこまでではないにしろ、それを何十枚と集める作業はなかなかの大仕事。ある程度集め終わった頃には、ほぼ体力を使い切っていた。
「さす、がに、きつ、いぃぃ……」
ひとり息を切らしているところへ、「姫さま!」と駆けてきたのはディオンだ。



