ディオンが心配していることも、助けたあとにどうするのかという懸念も、ルイーズはちゃんと理解している。一方で、このザーベス荒野にいる限り、そう簡単になにかが起こり得ないこともわかっていた。
(まずは、身体のなかの毒素をきれいにして……)
聖光力を操り、例の綿雲で女性の身体を丸ごと包み込む。
(元気になって、おねえさん)
治癒異能とも言われている聖女の力は、しかし万能ではない。
聖光力の効果が発現するのは、基本的に怪我などの外的要因のみだからだ。
体内を侵す病は治せないし、体力を回復させることもできない。奇跡の力なんて大層な評価をされているくせに、喪われた命を蘇生することも不可能ときている。
毒は外部から入りこんだものゆえに、外傷や穢れ扱い──ようするに〝異物〟として取り除けるが、そうしたところで彼女の身体がもたなければ意味がないのだ。
「……ん。毒は、とれたよ」
やがて女性の身体を蝕んでいた毒素をすべて取り除いたとき、彼女の顔にはわずかながら血の気が戻っていた。だが、目を覚ます様子はない。
「あとはこの方の生命力次第、といったところですね。いかがされますか、姫さま」
「……看病しなきゃ。ディーも休憩した方がいいし、ここでキャンプしよ」
「きゃんぷ?」
つい前世の記憶から抜き出した知識を口にしてしまったルイーズは焦った。
どうやら、この世界に〝キャンプ〟という概念は存在しないらしい。
(この世界の創造者、ほんとわけわかんない……)
とにもかくにも基準が意味不明だ。
ピクニックは残したくせに、なにゆえキャンプを消す必要があったのか。



