動くなと言われていたことも忘れて、ディオンのもとへと駆け寄る。
「あっ、姫さま!」
彼の腕に抱えられた者を覗きこんだルイーズは、その瞬間、絶句した。
「……!!」
頭巾の下にあったのは、肩上で切り揃えられた真紅の髪。
瞼が伏せられていてもわかるほどの、美麗な容姿。
質素な服装は男性用のもの。眠っていてもわかるほどの怜悧な雰囲気も相まって、ルイーズは一瞬『なんてきれいなイケメンさん』と思ったのだが。
(お胸が、ある……? えっ、女の人?)
いったいどういうわけか、身体のシルエットはまちがいなく女性だ。男装の麗人、という言葉が非常に似合ういで立ちに、ルイーズは虚を衝かれながら問う。
「この人、どっか怪我してる?」
「いえ、見たところ大きな怪我はないようですが」
「じゃあ、なんで死んじゃいそうなの? もしかして、毒……食べちゃった?」
「それはないでしょうね。直接ザーベスの毒を摂取したのなら、とうに事切れているはずですから。ただ、この場所に長くいたのなら、空気から毒素を体内に溜め込んで体内が侵されてしまった可能性はあります」
彼女の顔はひどく青白い。唇も血の気をなくして紫色になってしまっていた。
そっと頬に触れてみれば、恐ろしいほど冷たくてゾッと怖気が走る。
(でも、生きてるなら……助けられる、はず)
しばし思考を巡らせ意を決すると、ルイーズは彼女の心臓部分に手を伸ばした。
「……お救いになるのですか?」
「うん。だって、助けられる命を見捨てられないもん」



