ディオンの手を引いて、ルイーズは浄化したザーベスの茎を全身で持ち上げた。
「はい、飲んで」
「えっ」
「ディー、水分不足だよ。顔色悪いし、クマもひどいし、飲まないとダメ。主がちゃんと、毒味してあげたから、ね?」
切断された茎の部分をギュッギュッと押すと、溢れんばかりに零れ落ちてくる水滴。
慌ててそれを手の皿で受け止め、ディオンは躊躇いながらも口に含む。
「……どう?」
「おいしい、です。姫さま。こんなに美味しい水は、初めてです……っ」
「んふふ、大げさ。はい、もっといっぱい飲んで。水筒にもためなきゃ」
「はい、はい、姫さま……っ」
自身の涙なのか水なのかわからない状態で、何杯か水分を流し込んだディオンは、ようやく生気を取り戻したようだった。
大丈夫だとは言いつつ、やはり彼も限界が近かったのだろう。食糧も水分も、自分はほぼ口にせずルイーズに与えていたのだから当然だ。
心なしか髪にツヤが出て、美青年度が増したような気もする。
「さて、姫さま。これでまたしばらくは水分にも困りませんね。ザーベスの蜜は毒さえなければ豊富な栄養分を含むと聞いておりますし、もう無敵でございますよ」
「うん。なくなったら、また浄化すればいいもんね」
「あまり無理はさせたくないので、できれば早くグウェナエルさまが封印されている場所に辿り着きたいものですが……」
そうは言いつつ、この荒野だ。進んでいるのか戻っているのかさえ判然としないこの場所は、もはや壁に隔たれていないだけの大迷宮といっても過言ではない。
とはいえ、こんな大冒険もルイーズにとっては初めての経験。



