「ああこれはどうしたことか。こんな神をも凌ぐお力を行使できてしまう崇高な姫さまの存在が知られれば世界の常識は一変してしまう……っ。たとえ姫さまが悪魔の御子であろうと人は姫さまを崇め奉り誰にも害されぬ檻のなかへ畏敬の念を抱きつつも閉じ込めてしまうかもしれない……。いや、まちがいなくそうする現に自分がそうしたいのだからっ!! ああ姫さまディーはどうしたらいいのでしょういっそこのまま人の手が及ばぬザーベスの地でたったふたり暮らしていくのもアリなのでは!?」
「絶対いや」
真顔で言いきり、ルイーズはすんと両目を据わらせ、以降口を閉ざした。
「いやしかしっ、姫さまの力に頼りきりになるなど従者としてあるまじき──」
ルイーズの拒絶など聞こえていないらしい。こうなったディオンはしばらく収まらないため、ルイーズは早々に放っておくことを決めた。
主愛が強すぎて、妄想から現実に抜け出てくるまで時間がかかるのだ。
(というか……やっぱり、人相手じゃなくても浄化できるんだ。いまいち仕様がわかんないけど、けっこう自由度が高い世界なのかも?)
ふむ、と思案しながら、ルイーズはひとり茎の部分に歩み寄った。
そこでハッと我に返ったディオンが振り向く気配を感じたが、かまわず零れ落ちそうになっていた水滴を指先ですくう。
「姫さっ──!?」
「……ん」
ぱくり、と。
水滴が乗る指先を口のなかへ含んだ瞬間、ディオンの絶叫が耳をつんざいた。
「あああああああっ! ひっひひひひひ姫さまなんっなっなんってことをっ!」
「……うっ」
「姫さまああああああああぁぁぁぁあああっ」



