熱が疼く。ぐるぐると抑えきれないまま、身体の中心から溢れてくる〝力〟。それはまるで、ルイーズの強い想いと連動して訴えかけてくるかのようだった。

 聖女の力とは、本質から異なるもの。

 それは、ルイーズの知らない未知の力。

 けれども、たしかにルイーズのなかにある力。

(……そうだ。ルゥは、人と悪魔の子。大聖女と大魔王の子。どっちかじゃない。ルゥのなかには、ママの血もパパの血もある。なら、ルゥは……聖女だけじゃなくて悪魔にもなれるはず)

 だが、それはおそらく、ルイーズの生命を大きく左右する決断で。

 ──ルイーズはこれまで、人として生きてきた。

 たとえ人と悪魔の混血だとしても、人として育てられた。

 それは人として生きることを前提としたもので、きっと母のミラベルも口にこそ出さないけれど、そうあることを望んでいたのだろう。

 たとえ世界から見放されたとしても、自身と同じ人として母娘で長く仲よく生きていられたらと、切に願ってのことだったにちがいない。

 だけれど、儚くもそうはならなかった。

 ゆえにルイーズは、人ではない父、大魔王の封印を解くに至ったのだ。

(ううん。きっと、パパとまた会えたあの瞬間から、ルゥはもうただの〝人〟じゃなくなったんだ。……でも、そんなふうに〝人〟で〝悪魔〟なルゥだからこそ、できることがきっとあるよね)

 怖い。

 怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い。

 どうしようもなく、この先へ踏み出してしまうのが、怖い。

 けれど、不思議と迷いはなくなっていた。

 恐怖と綯い交ぜになりながら感情を支配するのは、決意と勇気、だろうか。