やがて煙が完全になくなったところで、ルイーズはディオンの手を取った。
「ディー。終わったよ。もうだいじょぶ」
「……姫さま、自分いま猛烈な感動に打ちひしがれているので少々お待ちを」
「待たない。ほら、はやく」
目元を抑えて震えているディオンに苦笑して、ルイーズは繋いだ手を引いた。
「なんか、かわいいお花になったね?」
あれほど禍々しい色をしていた紫色の茎は、若々しい青緑に。
毒林檎のようだった花弁は、柔らかい薄桃色に落ち着いていた。
流れ出している蜜もまるで蜂蜜のような黄金色で、断ち切った茎部分から染み出していた水滴もいっさいの濁りなく透き通っている。
見た目に関しては上等だ。このやたらファンシーな色合いの花が、たった一滴で致死量となる毒素を含んだ殺人花だと思う者はいるまい。
「姫さまはここでお待ちを。自分が確認してまいります」
ルイーズの手を離し、ディオンは恐る恐るザーベスに近づく。
そうして、そっと茎に鼻を寄せ、くんくんと丹念に匂いを嗅ぎ始めた。
(……本能?)
魔獣姿ならまだしも、美青年の姿でそれをやられると、ルイーズは正直、見てはいけないものを見ているような気がしてくる。
やがて、ザーベスの上から下まで確認し終わった彼がどこか呆然と呟いた。
「姫さま──これは、大変なことですよ。いっさいの毒素が感じられません……!」
「ほんと? よかった。じゃあ飲め──」



