ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~


 朦朧とする頭で、そう考えた次の瞬間。

 バッシャアアアアアアアン!

 突如として激しく水面が波打った。

 かと思えば、ジルダ湖から何本もの水の竜巻がのぼった。

 なにが起こったのかわからないまま──空中にいたグウェナエルたちをも容赦なく巻き込んで、それは一瞬の間に湖中を覆いつくす。

 激しく渦巻きながら噴きあがる、いくたもの水柱。

 そのなかを、まるで渡り歩くように、魔物が飛びまわっていた。

「父上っ……!」

「パパ……!」

 ふたりの姿が見えなくなって、ルイーズとリュカはたまらず声を上げた。

 だが、水柱から飛んでくる飛沫が降り注ぐなかでは、容易に動けはしない。

 ディオンが三名まとめて自身の外套で覆い、毒の水から守ってくれているけれど、その顔が苦渋の色に染まったのをルイーズは見逃さなかった。

「まって。ディー、もしかして濡れてる……!?」

「っ、いえ、多少の飛沫くらいどうってことありませんよ」

 ハッと身じろぎしてディオンの身体に目を走らせる。

 と、外套を被せるためにむき出しになったディオンの手の甲に、木々では避けきれなかった飛沫が飛んできていた。それはまるで火傷のように紫色の斑点となり、ディオンの白くて綺麗な手を穢していく。

 身の毛もよだつような、恐ろしい光景を目にした瞬間。

 ──ルイーズは、全身の血が沸騰したかのような心地を覚えた。

(だめ、だめだよ。こんなの……どうにか、しなきゃ。どうにか、みんなが助かる方法。なにか……なんでもいいから、みんなで、無事に帰れる方法……!)