形容しがたい不安を募らせながら、ルイーズはディオンに抱きつく。そこへ駆けてきたのは腕にリュカを抱えたエヴラールだ。
「ディオン。申し訳ないが、リュカを頼めるか。私は陛下とアレの相手をせねば」
「はい、おまかせを。どうかお気をつけて」
自分を預け、あっという間にグウェナエルのもとへ飛び立った父の背中を見つめ、リュカは途方に暮れたように立ち尽くした。いまだに状況を理解できていないのか、涙の膜が張った彼の瞳には強い困惑の色が浮かんでいる。
「……リュカ」
ルイーズは、荒い息を吐き出しながら、リュカを呼んだ。
気のせいか、あるいは緊張のせいか、どんどん動悸が早くなっているような気がするが──心配をかけないように、なるべく表情は押さえ込んだ。
しかし、その弱々しい呼びかけに、リュカはハッと我に返ったらしい。勢いよく振り向いて、慌てたようにルイーズのそばへ駆け寄ってくる。
「ルゥ……っ! どうしてルゥまでっ? まだ身体つらいはずなのに」
「リュカがね、心配だったの。ねえ、そのお花……もしかして、ルゥに?」
ほぼ確信しながらも尋ねると、リュカはわずかに動揺を示しながら首肯した。
「うん。これがあれば、ルゥ、少しはよくなるかなって……」
リュカはへにょりと眉尻を下げながら、気まずそうに俯く。
「ぼく、父上たちのお話、聞いちゃったんだ。ルゥの熱は、悪魔の力が暴走してるからだって。それで、あの、水晶花の話を思い出して」
リュカはルイーズに優しく水晶花を持たせると、あいまいに笑った。



