「どうにかできるのなら、とっくにしているでしょう。ここまでエヴラールさまやグウェンさまが慎重になっているのは、そうせねばならない理由があるからです」
そこまでディオンが答えたところで、宙を泳いでいた魔物が大きく身体をうねらせて湖に飛び込んだ。ふたたび激しく水しぶきが上がる。
「チッ……埒が明かん」
それぞれ身を守る一方で、ひとり上空へと飛び立ったグウェナエルは、湖を見下ろしながら忌々し気に舌を打った。その双眸はいつにも増して険しい。
「やはりな。──エヴ! まちがいない、彼奴は水中だと姿が消える性質だ!」
「なるほど、やはり……!」
(──水のなかでは、姿が消える?)
にわかには信じられないことを聞いて、ルイーズは愕然とした。
「……そういうことですか。おそらくあの魔物は、水中に潜ると水に同化して姿が見えなくなるのでしょう。水系の魔物にはごく稀にある現象です」
「あれほどのものが見えなくなるだと……!?」
「加えて、湖の水はアレが吐き出した毒素に冒されているため潜れない。万が一落ちでもすれば、悪魔でもタダでは済みませんからね」
だからこそ、グウェナエルたちも容易に手を出して対処することができなかった。
ようするに、そういうことなのだろう。慎重に動いていたのも納得できる。
(でも、そんな危険なのに、目をつけられちゃったって)
ようやく事の真相を知れたのはいいが、ディオンのいう通り、最悪な状況だ。
身体のうちで燻る熱のせいで思考が上手く働かないが、とにかく、いまはなるべく迷惑にならないようにするしかない。



