てっきり水不足問題のことで我慢ならずに来てしまったのかと思ったが、あの様子を見る限りではそうではないのかもしれない。
実際、彼はジルダ湖の水にはいっさい触れていなかった。
しかしながら、問い詰めるエヴラールに対し、リュカは「ごめんなさい」と言うばかりで、それ以外はだんまりを決めこんで俯いていた。
反論もしない。目的を言うこともない。
そんなリュカに、エヴラールはどんどん苛立ちを募らせていく。さすがに見かねたのか、グウェナエルがエヴラールを窘めようと名を呼んだ。そのときだった。
ポチャン──。
わずかに、水面が動く。普通なら気にも留めないほどのかすかな音。
だが、ほぼ同じタイミングでディオンが大きく後方へと飛んだ。
「なにかきます!!」
ほぼ同時に、グウェナエルがエヴラールとリュカの足元に魔法陣を展開させて、ふたりを闇のベールで包みこむ。改めて見れば、ディオンもそばにいたベアトリスをしっかりと反対の腕に抱えていた。
次の瞬間、なにかが勢いよくジルダ湖の水面から飛び出した。かと思えば、まるで雨のような水飛沫が、ざばあああっとルイーズたちに降り注ぐ。
「っ──ディオン、絶対に水を被るなっ!」
「はい!!」
エヴラールとリュカは闇のベールが守り、グウェナエルは素早く頭巾を被って難を凌いだ。一方、ディオンは素早く森に走り込み、木々で水しぶきを防ぐ。
己の外套をルイーズとベアトリスへ被せているあたり余念がない。ほんの一滴でも害することは許さないという従者の気概が感じられた。
「なんだ、あれは……」



