──そんな可能性を考えるたびに、胸の奥が軋むのだ。 「……たとえ大魔王の力をもってしても、過ぎ去った時間だけは二度と戻すことはできない。なればこそ〝いま〟を見失えば先々の未来さえも失うんだ、エヴ」 さすがに言い返せなかったのか、エヴラールがぐっと押し黙ったのがわかった。 ふたり分の足音が、静寂が落ちる城の廊下を鳴らす。 やがて、グウェナエルの耳にひどく掠れた沈痛な声が届いた。 「……重々、承知しておりますよ。我が主」