(──ほら、当たってしまうのですよ……っ)
「ディオンッ! っ、グウェナエルさまも……!」
焦燥に満ちた声が廊下を走った。
声の主はベアトリスだ。あちらも全速力で駆けながら、声を張り上げていた。その遥か後方には、小さな身体で必死に追いかけてきているリュカの姿がある。
彼女が腕に抱えている子どもを見たディオンは、ガリッと唇を噛んだ。痺れるような痛みと血の味が広がるが、それすらも気に留めてはいられない。
「ルゥ……!」
「姫さま……っ!」
身をもがれるような心地になりながら、ディオンは愛する主を呼んだ。だが、ぐったりと瞼を閉ざした子ども──ルイーズがその声に答えることは、なかった。



