「子どもの成長など一瞬ですからね。お忙しいのは存じておりますが、グウェンさまも姫さまともう少し触れ合う時間を増やしてはいかがですか?」
「……そのために動いているところだ。俺としてもルイーズと過ごす時間はなによりも確保したいものだからな」
「毎朝『パパは今日もお仕事?』と訊かれるんです。物分かりがいい姫さまはわがままは言いませんけど、本当はすごく寂しがっておられると思いますよ」
グウェナエルがぐっと言葉に詰まった。なにかを懸命に堪えるように片手で苦く歪んだ顔を覆ったかと思うと、やがて深々とした嘆息が零れ落ちる。
その形容しがたい気持ちが胸が痛むほど理解できるディオンとしては、〝胸中お察しします〟と両手を合わせておくしかない。
「なるべくはやく、片をつける。それまでは頼んだぞ、ディオン」
「お任せくださいませ。姫さまは自分が必ず──」
そこまで口にしたときだった。
ふいに、北東の方角からガチャン!と勢いよく扉を開けた音が響いた。獣耳をぴくりと動かしてその音を拾ったディオンは、さっと表情を硬くする。
──とても、嫌な予感がした。
(姫さまの部屋がある方向から、ですね)
グウェナエルもなにかを察したのか、空気をひりつかせながら足早に厨房を出た。
ディオンもせっかく用意した軽食を持たぬまま、彼の後を追う。
言葉を交わすまでもなく、ふたりそろって駆け出した。
(ああ、最悪です。こういう予感は大抵──)
ルイーズの部屋は、厨房のある一階のちょうど斜め上あたり。二階の北東方向だ。
とんでもない速さで廊下を駆け、二階へ続く階段を登りきったそのとき、



