◇
「ああ、ディオン。ここにいたのか」
城の厨房に顔を出したのはグウェナエルだった。軽食を片手にルイーズの部屋へ戻ろうとしていたディオンは、予想外の登場に「おや」と目を丸くする。
「これから姫さま方のおやつの時間なので、サンドイッチを準備していたんですよ」
「サンドイッチ?」
「姫さま考案の軽食です。これが簡単で美味しくて。あ、グウェンさまもよかったら一緒に来られます? 姫さま方もお喜びになりますよ、きっと」
「いや……行きたいのは山々だが、その前におまえに話があってな」
はて、とディオンは動きを止め、改めてグウェナエルを見た。
「自分に、でございますか? わかりました」
ディオンは了承しながらも、ちらと時計に目を遣り、時間を確認する。
ベアトリスひとりに子どもふたりを預けている状態だ。とても利口な子たちだから問題はないだろうが、それでも自身が離れるのは不安がまとわりつく。
「なに、そう時間は取らせん。最近のルイーズたちのことで、少しな」
「ああ……」
おおよその内容を察して、ディオンは耐えきれず苦笑する。
「口を出すなと言ったのに、とお怒りですか」
「……エヴはな。俺はどちらかと言えば見守りたいという気持ちが強い」
「それはまた。意外ですね」
グウェナエルはたしかにルイーズを溺愛している。



