「ありがとうございます。ですが、それが仕事でしたからね。そうして数え切れないくらい剣を振った数だけ己の力になっているはずですし、糧にはなりましたよ」
「……そっか。でも、ベティが無事でいてくれてよかった」
「姫さまに出会うためでしょうね。きっと」
「んふふ」
ベアトリスにぎゅっと抱きついて、ルイーズははにかむ。
(みんな、仲よし。よきかなよきかな)
かたわらでディオンが「んな!?」と目を剥き、至極幸せそうな表情で「天使」と愉悦に浸るベアトリス。リュカは三名を交互に見ながら、にこにこと笑った。
そんなほのぼのとした空間に気が抜けたのだろう。
ふいに抗いがたい眠気が襲ってきて、口から大きな欠伸が零れた。
「ふぁぁ……なんかルゥ、眠くなっちゃった」
「姫さま、やはり体調が……」
「ううん。ただ、眠いだけだよ。ディーってば心配しすぎ」
もう、と頬を膨らますと、ディオンは「性分です」と苦笑した。
「今日はこのへんにして帰りましょう。リュカさまも、よろしいですか?」
ディオンの問いかけにほんの一瞬だけ迷った様子を見せたリュカだったが、ふたたび欠伸を零したルイーズを見てすぐに首肯した。
「うん。ルゥのこと、寝かせてあげたいもんね」
「ありがとうございます。いろいろとお考えのことがあるとは思いますが、リュカさまもあまり根詰めすぎないでくださいね」
こくっとリュカは首を縦に振るが、その顔はまた昨日のように考え込むものに変わっていた。若草色の瞳に影が落ちるのを見て、ルイーズは不安を覚える。
(……リュカは、すんごく真面目なのね)
それはよいことだけれど、周りが見えなくなりがちなところはいただけない。
(もっと、周りを頼ってくれたらいいんだけどなぁ)
うとうと微睡みに浸りながら、ルイーズはひとりリュカの先行きを案じた。



