「ええ。一言で表すのなら、バケモノでしょうか。悪魔が意思と自我を持つものだとすれば、魔物はそこから意思と自我を除いて凶暴化したものと考えてください」
(うぅん……たしかに、それはバケモノかも……?)
悪魔は、ただでさえ闇魔法を行使するモノたちだ。
彼らから意思と自我をなくしただけでも恐ろしいのに、凶暴化なんてしてしまったあかつきには、もはや手の施しようがないのではないだろうか。
想像してぶるりと背筋を震わせながら、ルイーズは情けない顔をした。
「こわい。けど、ルゥは見たことないよ?」
「ルエアーラ幽谷は、ああ見えて神聖な場所ですからね。未開の地であるのも、神のおわす場所にもっとも近い場所と言われているからです。それゆえか、あの場は不思議なくらいに魔物が発生しませんでした」
初めて聞く故郷の実態に、ルイーズはぽかんとしてしまった。
なるほど、幽谷から出たことがなかったルイーズが魔物を見たことがないのも当然である。あの場にいる限り、そもそも無縁の存在だったのだ。
「そういえば、人間界でも魔物による被害は多かったな……」
「え、そうなの?」
ぼやくベアトリスにルイーズが食いつくと、彼女は美麗な顔に苦い色を浮かべた。
「わたしがいた第三部隊は、よく魔物討伐に駆り出されていまして。大量発生したあいつらを夜な夜な狩った記憶は、正直思い出したくもありません」
「うええ……ベティ、大変だったね」
ベアトリスの頭に手を伸ばして、よしよし、と撫でる。
すると彼女はどこかくすぐったそうな表情で微笑み、首を横に振った。



