「だ、だいじょぶだよ、リュカ。ルゥがきれいにしたから」
「えっ、えっ、でも……っ」
「はい。大丈夫でございますよ、リュカさま。ほんのわずかの穢れもない澄み渡った水になっておりますから」
顔を上げたディオンは、大変──それはもう大変誇らしげな顔をしていた。
「ああ自分の姫さまは本当になんと、なんっとすばらしいのでしょうね……!」
「ディー、それこっちにかして。ルゥも味見する」
「あ、はい」
ディオンは盛大にスルーされたことに肩を落としながらも、ベアトリスの腕に抱えられているルイーズのもとへ木樽を運んでくれた。
人差し指を使って水を一滴だけ掬い、ルイーズもぱくっとくわえてみる。
「ん。おいしいね」
「はい、姫さま。姫さまが浄化した水ほど美味しいものはありませんから」
「ほら、リュカもこっち来て。飲んでみて」
ふたたびディオンを華麗にスルーし、ルイーズはリュカを手招いた。
おそるおそる近づいてきたリュカは、まだ信じられない様子だ。けれど、ルイーズたちに倣って一滴だけ水を掬い口に含んだ瞬間、パッと目を輝かせる。
「ほんとだ、美味しい……! 身体もなんともないし、ルゥ、すごい!」
「ルゥはね、聖女だから。汚いものをきれいにできる力があるんだよ」
「そうなんだ、ほんとにすごいよ。でも、あれ? じゃあこれで解決?」
「ううん」
たとえば汲んできた水を浄化して、ある程度の飲水を確保することはできる。
だが、一生ここでルイーズが〝浄化装置〟になるわけにもいかない。
いつまで魔界にいるかどうかもわからないし、ルイーズだって無限に聖光力を使えるわけではないのだ。それに──。



