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「──父上は、ぼくのことが嫌いなんだ」
ルイーズの部屋でソファに並んで座り、リュカはぽつぽつと話し出した。
ディオンが淹れてくれた紅茶が湯気を立たせるなか、ぐずっと鼻を啜る音が響く。
「ぼくが、魔王の子なのに、できそこないだから。目も合わせてくれないし……」
「そんなこと……」
ないと思う、と言おうとしたルイーズは、直前で思いとどまる。
(たしかに、魔王さまってあんまり目を見て話さないかも?)
しかしそれは、リュカに限ったことではないような気もする。とはいえ見方を変えれば、自身の息子に対してやや素っ気なさすぎるとも取れるのかもしれない。
「ぼくは弱虫だから、父上にちゃんとしろって言われてもできないんだ。あんなに立派でかっこいい父上の息子なのに、ぼくはホントに、だめだめで……」
「うん? リュカは魔王さまのこと、苦手じゃないの?」
「えっ、なんで?」
「魔王さまの前だと、リュカ、いつもびくびくしてるから。怖いのかなって」
エヴラールを前にしたときのリュカの異常ぶりを見ていたから、てっきり苦手なのか、あるいは恐怖心があるのだとばかり思っていたのだが。
しかし、指摘されたリュカの方は、心外だったのか勢いよく首を横に振る。
「苦手なんて……むしろ、すごく尊敬してるんだ」
「尊敬?」



