「リュカ! ねえ、待って!」
「ついてこないで……っ!」
「やだ! だってリュカ、泣いてる!」
「泣いてない!」
「ルゥ、見たもん!」
これでは埒が明かない。
そう思ったルイーズは、激しく息を切らしながらも続けて叫んだ。
「リュカ、なにに悩んでるのっ? なんで、魔王さまの前だと、そんなに緊張してるのっ? だって、リュカの、パパなのに!」
ずっと聞きたかったこと。聞きたかったけれど、聞けなかったこと。思い切って投げかけた問いかけが効いたのか、リュカはようやく足を止めかけた。
だが、その拍子に足がもつれ、ベタンと前のめりに転んでしまう。
「わあ、リュカ!」
なんとか追いつき駆け寄ると、リュカは地面に突っ伏したまま肩を震わせていた。
「……リュカ……。いたい?」
「いたく、なんかないっ。これくらい──」
「じゃなくて。心が、いたいんでしょ?」
ルイーズはその場にしゃがみこんで、よしよしとリュカの頭を撫でた。
「る、ル、ゥ……ぼく……っ」
しゃくりあげながら顔を上げたリュカは、せっかくの綺麗な顔がもったいないくらいに大粒の涙と鼻水で濡れていた。ぐずっ、ずびっ、と鼻を啜る様子は六歳の子どもらしい年相応ぶりで、ルイーズはなんだか安心してしまう。
(……そりゃあ、王子さまだって泣きたいときはあるよね)
リュカを助け起こし、ルイーズはポケットから取り出したティッシュで丁寧に顔を拭ってあげた。いつもは世話を焼かれる側だけれど、たまには逆も悪くない。
「すぐそこ、ルゥのお部屋だから。行こ?」
「っ……うん……」
「お鼻、ちーんしてね」
自分より少しだけ大きなリュカの手を引いて、ルイーズは歩き出す。おろおろとついてくるディオンとベアトリスには、目線で〝大丈夫〟と伝えておいた。
(ルゥの方が、年下だけど。でも、おねえちゃんだからね)



