ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~



 店主が教えてくれた広場先の休憩場で昼食を摂り、その後もとくにバレることなく城下を見て回ったルイーズたち。引きこもり生活が長かった身からしてみれば、こうして自由に買い物をするのは初めての経験で、とても楽しかったのだが──。

(……リュカ、どうしたんだろ)

 リュカは、あれからずっと暗い顔をしていた。

 頭巾は深く被ったまま外さないし、話しかけても反応が薄い。加えて、時折こちらが聞き取れないほどの声でぶつぶつ口を動かしている。

 なにやら考え込んでいるのだろうが、聞きたくても聞ける雰囲気ではなかった。

(さっきの、そんなにショックなことだったのかな? おじちゃんはただ、エヴラールさまがどうにかしてくれるのを待つしかないって言っただけなのに)

 そんなリュカのことが気になって、ルイーズも心から満喫はできないまま帰宅の時間になってしまった。帰路につきながらも、リュカの顔色は戻らない。

 無事に城へ帰宅したルイーズたちを迎えたグウェナエルは、その形容しがたいどんよりとした空気を察しながらも、あえて追及はしてこなかった。

「楽しめたか、ルゥ」

「うん。クレプアン、すっごく美味しかったよ。また食べたい」

「だがおまえ、ふたつも食ってなかったか」

「見てたの?」

 まあな、と苦笑したグウェナエルは、ちらっとリュカへ視線を遣る。

(そっか、見てたからなにも聞かないんだ)

 ぽすん、とグウェナエルの手が頭巾に守られたリュカの頭に乗せられた。

 びくっと肩を跳ねさせたリュカだが、すぐにおずおずと目線を上げてグウェナエルを見返す。その瞳は迷いと不安を混ぜ込んだ複雑な色を孕んでいる。

「……グウェナエルさま。あの、聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「領地の水不足、なんですけど……。ぼ、ぼくができること、なにかありますか」

 グウェナエルは面食らったように片眉を上げた。

「ないな」

「……だけど、原因がわかってるなら、」

「たとえ原因がわかっていても、対処まで時間がかかることもある。エヴラールとて見て見ぬふりをしているわけではないぞ」

「わ、わかってるんですけど……民が、すごく困ってて。でも、ぼくはお城で困ったことなかったから、知らなくて……っ」