「そういうこった。立ち入り禁止になってるせいで採取もできねえし、みんな頭を悩ませてるもんさ。まあ、エヴラールさまが解決してくれるまでの辛抱だな」
エヴラール。その名を耳にした瞬間、リュカがびくりと肩を跳ね上げた。
それに気づいたルイーズは、さきほど離してしまったリュカの手をふたたび取る。
きゅっと握れば、リュカは弾かれるようにルイーズを見た。その眦に涙の筋が溜まっていることには気づかぬフリをして、小声で尋ねる。
「リュカは、いまの知ってた?」
「っ、ううん。でも、父上がなにか頭を悩ませてるのは知ってた。最近は、ルゥのお父上ともいろいろ話してたし……」
「パパと?」
小声で話していると、ふいに店主がこちらを振り返った。
(あっ)
さきほど顔を上げた反動で、頭巾が少し捲れてしまっていた。ルイーズが焦るよりも早く彼の目がリュカを捉え、どこか当惑と混乱が入り交じった色が浮かぶ。
「そっちの坊ちゃん……まさか」
「!!」
リュカがぎょっとしたように後ずさり、慌てたように頭巾を深く被り直す。
しかし、そんなあからさまな反応をしては、むしろ認めているようなものだ。ルイーズは「あちゃあ」と眉尻を落とし、仕方なく口元にひとさし指を立てた。
──シー、だよ。
ルイーズの仕草に、店主はなにかを悟ったのだろう。
声をひそめて「あー、な」と気まずそうに後頭部をかいた。
「……お忍びか?」
「……まあ、そのようなものです。どうか他言なさらぬようお願いします」
ディオンもごまかすのは諦めたのか、苦笑しつつ頷いて見せた。



