「俺も詳しくは知らねえが、どうも湖の魚が魔物化しちまったせいらしいぞ」
「魔物化、ですか」
「ああ。ジルダ湖から流れてくる水は、もともと穢れが皆無で澄みきってたんだ。そのまま飲んでも問題ねえくらいにはな。だが、その魔物が大量の毒素を排出してるとかなんとかで、水自体が汚染されちまってるんだと」
店主は、ひどくげんなりした様子で肩を竦めてみせた。
「ここらはジルダしか水源がねえからな。最近で日頃飲めるもんといやあ、もっぱら果実水だけだ。ただの水も高騰しちまって商売もあがったりだよ」
「それはそうでしょうね。ほかの店舗のみなさんも困っておられますか?」
「ああ。んでも、困ってるといやあ……一番は〝水晶花〟かもしれねえが」
水晶花。初めて耳にする単語に、ルイーズの好奇心がむくりと顔を出す。
「それ、なあに? お花?」
「ん? なんだ嬢ちゃん、これも知らねえのか。水晶花ってのはジルダ湖の周りに咲く花のことさ。花弁一枚しか持ってねえが、見るか?」
ほれ、と店主は懐からなにやら取り出して、ルイーズに見せてくれた。
「わ、きれい。これ、水晶?」
「水晶花っていうくらいだからな。花弁部分は水晶でできてんだ」
透明な硝子石のようなものだった。艶やかでいっさいの濁りもない。
「ただきれいなだけじゃなくて、水晶花には魔力を安定させる力がある。だから、ここらの民のあいだでは一種のお守りとして流通してたんだが……。これも、湖が穢れちまったせいでぐんと数が減っちまってよ」
「きれいなとこじゃないと、育たない?」



