どこかで見たことがあると思った瞬間、天啓のように蘇った前世の記憶。
あの見た目は完全に〝クリームたっぷりのクリームパン〟だ。だが、シードル花蜜はどちらかというと蜂蜜のようだし、蜂蜜パンと考えた方がいいだろうか。
ふたたびお腹の虫が鳴いて、隣にいたリュカがくすっと笑った。
「熱いから気をつけな。んで、これはもう一個おまけだ。いっぱい食えよ!」
頼んだぶんのふたつと、おまけ。計三つの熱々クレプアンを両手で受け取って、ルイーズは満面の笑みでお礼を述べる。
「ありがと、おじちゃん。うれしい」
「あ、ありがとうございます。いただきます」
ふたりで礼儀正しくペコリと頭を下げてから、ディオンのもとへと戻る。
なかば想像ができていたが、ディオンは目に涙を浮かべながら見守っていた。
「ディー、見て。ちゃんと買えたよ」
「ええ、ええ! しかと目に焼きつけましたとも! ああ、姫さまが自分の知らぬ間に成長しておられて、寂しいやら嬉しいやら……!」
「おーげさ。それより、ベティは? いない?」
ついいましがた、ディオンの横にいたはずのベアトリスの姿がなかった。
ルイーズがキョロキョロとあたりを見回すと、ディオンは涙を拭いながら振り返る。
「ベアトリスには、自分たちの食事と飲み物を買いに行ってもらっています。すぐ戻ってくると思いますが……」
その言葉通り、ベアトリスは両手に袋を抱えてすぐに戻ってきた。しかし、どこか浮かない面持ちの彼女を見て、ディオンは袋を受け取りながら目を瞬かせる。
「どうしました?」



