つい当たり前のように買いに行こうとしてしまったが、今世のルイーズにとっては初めてのお使いならぬ初めてのお買い物となる。
危ない危ない、と内心冷や汗をかきながら、ルイーズはリュカの手を引いた。
「リュカ、行こ」
「うん」
シードル花蜜のクレプアンを売っている屋台の店主は、見るからに気さくでマスコットのような垂れ目が特徴的な悪魔だった。頭部の両側にはいかつい鹿角のようなものが生えているが、顔立ちはとても穏やかでルイーズは安心する。
「こんにちは」
「おっ、こりゃあかわいらしいお客さんだ。うちのクレプアン買ってくかい?」
「うん。……く、くれぷあん、ふたつください」
「ふたつなら五百コレだな。わかるか?」
「わかるよ。五百コレ……これで足りる?」
「おう、ぴったりだ! できたてをやるから、ちょいと待っててくれ」
上機嫌で答え、店主はすでに成型されている生地を釜にいれて焼きだした。
小さなルイーズは看板に阻まれてその様子が見えないけれど、すぐに甘くて美味しそうな香りが漂い始める。その香りにつられたのか、お腹の虫がぐぅと鳴いた。
「あまーい匂いする……!」
「ははっ、だろ? うちのは最高級のシードル花蜜を使ってんだ。美味いぞ~」
「楽しみ。ルゥね、それ大好きなの」
「なかにもたくさん詰めてやるからたんと味わいな。──ほーら、できた!」
焼きあがったばかりのクレプアンのなかに、シードル花蜜をたんまりと詰める。
クリーム器のようなものから大好きな花蜜がとろとろと流れ込んでいくのを見て、ルイーズはごくりと喉を鳴らした。
(……はっ、クリームパンだ!)



