「ルゥ、ぼくと手つなごう? 迷子になっちゃったら大変だから」
エヴラールがいないときのリュカの方が、ルイーズは好きだった。
お兄ちゃん、とつい呼びたくなってしまうほど、リュカはいつもにこにことルイーズの世話を焼いてくれるのだ。大人しく引っ込み思案なところは変わらないが、挙動不審ではなくなるし、話すときもおどおどしない。
「ん。リュカは城下にくわしいの?」
「うーん、そこまでではないけど……。でも、お祭りのときとか内緒で何回か来てるからおぼえてるよ。案内するね」
「うん、ありがと」
差し出されたリュカの手に自分の手を重ねる。
たった一歳差なのに、リュカの手はルイーズよりひと回りほど大きかった。
「ディオン、ちょうど昼時だ。ゆっくり見て回る前に食事をした方がいい」
「そうですね。あちらに屋台も並んでいますし、昼食にしましょうか」
ベアトリスとディオンの会話を聞いて、ルイーズは屋台で賑わっている方を見る。
(えっと……クォトレーズの蔓あり肉巻き、パレタッタの花のせ焼き餅、業火煮込みのマータン……。うん。びっくりするほど、どんなものかわかんないや)
異世界の食べ物は、前世の記憶がほぼ役に立たない。
材料名からして特殊ゆえに、名前も見た目も独特なものばかり。とりわけ、この魔界──エヴラールの城で出されるものは、初めて食べるものも多かった。
「リュカのおすすめは?」
「そうだなぁ、ルゥは甘いものが好きだから……。あっ、あれとかどう?」
リュカに手を引かれながら、ルイーズは指さされた方向へ目を向ける。
「シードル花蜜のクレプアン……?」



