「だが、俺は正直、おまえがこうまで〝魔王〟として上手くやっているとは思っていなかったぞ。民を大切にするおまえらしい支配の仕方で感心した」
「褒められているのか貶されているのかわからないのですが」
くつくつと笑い、グウェナエルはベランダの柵に上半身を預けた。
「俺が王だった頃は、もっと魔界の空気が冷えていただろう。土地も民もすべてが本能的で、ある意味〝悪魔らしさ〟があった。それこそが悪魔の求める世であり、悪魔の住む世界として正しいと思っていたからな」
「正しいではないですか。魔王ブレイズの領地は現在もそのような感じですよ。陛下の頃のように統制は取れていないので、ひどく荒れているようですが」
「無論、そちらを好む者もいるさ。だが、この領地の民のように穏やかな日常を望む悪魔も少なからず存在する。おまえ自身がそれを証明しているだろうに」
返す言葉を失い、エヴラールは口を閉ざした。
たしかに、エヴラールの領地の者は、滅多に諍いを起こすことはない。
争えば罰金が課せられる制度を設けたからだ。領地内はだれもが平和に、夜も不安に駆られることなく眠ることができるようにした。
争いたいのなら、領地の外でやればいい。
階級の奪い合いに他者を巻き込むな、と。
「こうしてそれぞれの地を治める〝王〟があればこそ、民は自分に合った地で暮らすことができる。──俺はいい変化だと思うぞ、エヴ」
「しかしそんなのは結果論にすぎません。あなたが魔界を支配していたあの頃は、だれもがそれを受け入れていたのですから」



