だから、いずれ〝王〟が帰還したときのために玉座を守ろうと決意した。
「……陛下。あなたがそうも頑なに〝王〟に戻ろうとしないのは、王女殿下が──ルイーズさまがいるからですか?」
「……娘を貶せば殺すぞ」
「ちがいます。純粋な疑問ですよ」
心を乱さず答えれば、グウェナエルはそれが嘘ではないと判断したのだろう。どこか投げやりな様子で舌を打つと、葡萄酒を片手に立ち上がりベランダへ出た。
仕方なく、エヴラールも後を追う。
「俺を助けたのはルイーズだ」
「っ!」
「まだ赤子に毛が生えたようなものなのに、あの子は数々の危険を乗り越えて俺のもとへ辿り着き、封印を解いてくれた」
「……そうですか、王女殿下が。利口そうな方だとは思っておりましたが」
「利口だとも。あの年頃の幼子とは思えぬ賢さだ。加えて物わかりもいい。ともすれば〝いい子〟すぎるほどにはな」
グウェナエルは葡萄酒に口をつけ、深紅の双眸を眇める。
「俺がいなかった五年──あの子は、ミラベルとディオンにしか関わったことがなかった。人の立ち入らぬ未開の地に引きこもり、世界のいろはをなにも知らぬまま育ったんだ。そうしなければ許されぬ存在ゆえにな」
掟に背き、大聖女ミラベルとの間にできた、人と悪魔の子。



