「死にたいほど俺から逃げたいの?それだけ切実なの?」
仄暗い笑みを浮かべてゆっくりとこちらへと近づいてくるエイダンは本当に辛そうで。
「お前が死ねば俺も死ぬ。…死んでごらんよ。ねぇ、秘書官様?」
エイダンはそう言った後、その美しいアメジスト色の瞳からツーッと涙を流した。
泣きながらエイダンが笑っている。
美しくも狂っている、チグハグなその光景に私は息を呑んだ。
そして数秒して、いつの間にか自身の体に自由が戻っていることに気がついた。
エイダンが魔法を解いたようだ。
どうすればエイダンは私の想いを信じてくれるのだろうか。
どんなに真剣に想いを伝えても、何故伝わらないのだろうか。
自由になった私はとりあえず首元に当てていた花瓶の破片をその場に落とした。
それからこちらに歩み寄ってきたエイダンへとゆっくりと視線を向けた。
エイダンと目が合う。
エイダンの瞳にはもうあの甘さはない。希望を失った悲しみだけが溢れている。
きっと私が惚れ薬を飲んでしまえば、エイダンは一生こんな瞳で私を見るのだろう。
ーーーーそんなの嫌だ。
エイダンは幸せであって欲しい。
他の誰よりもずっと。
愛しい存在に私はゆっくりと両手を伸ばした。
それから優しくエイダンの頬を両手で包み込み、先ほどと同じようにそっとエイダンの唇に私の唇を当てた。



