だからこの恋心は消すことにした。






パリーンッと派手なガラスの割れる音と共に水と花と花瓶の破片がその場に散らばる。
私はその中から適当な大きさの花瓶の破片を取ると、自分の首元へと当てた。



「わ、私は本当にエイダンが好きなんです!意地悪なところも、たまに見せる子どものようなところも、その美しい容姿も、全部全部好きなんです!この想いに私は命を懸けられます!」



そして私はエイダンの方へ向くと、その場で必死に叫んだ。
命を懸けられることがハッタリではないと思わせる為に、少しだけ花瓶の破片を動かし、首に切り傷を自ら作る。
少しだけ痛いが、このくらい平気だ。



「は?何してるの?」



そんな私を見て、エイダンは明らかに動揺していた。



「自分で自分に傷を作るとかバカじゃないの?」

「バカだと思われたって構いません。私はただエイダンに私の想いを信じて欲しいだけなんです。本気だとわかって欲しいんです」



眉間にしわを寄せ、理解し難いと言った視線を私に向けるエイダンに私は切実に自身の想いを訴えて、さらに破片を動かす。
じわじわと傷から溢れていた血は私が破片を動かし、先ほどよりほんの少し傷を深くしたことによって、たらりと首筋を流れ始めた。



「やっぱりお前はバカだよ」



先ほどまで動揺していたエイダンだったが、すぐに冷静さを取り戻し、バカにしたように笑いながら、右手を軽く振る。
するとエイダンの右手が一瞬だけきらりと紫に輝き、私の体は全く動かなくなった。
おまけに今まさに自分で切った首の痛みも、血が下へと流れ落ちる感覚もない。

エイダンが魔法を使って、私の体の自由を奪い、さらには首まで治してくれたみたいだ。

さすが国に選ばれるだけある優秀な魔法使いだ。
少し手を振るだけで、こんなにもいろいろなことができてしまうなんて。