———カーンッ…

———カーンッ…

「上手そうな予感はしたけど…」
「こういうのすっげー得意。」

夕飯で使う薪は自分たちで用意することになっている。
葉月たちの班は羽生が次々にきれいに割っていく。
また女子たちが遠巻きにざわついている。
(薪割りで黄色い声って…)

「羽生って腕にいい感じに筋肉ついてるよな〜。筋トレしてんの?」
同じ班の男子が言った。
「いや、べつに。」
「嘘つくなよー」

(料理人だから、フライパン振ったりして自然にたくましくなったんだろうなー本当に全部料理でできてるな、羽生くんて…)

真面目男子だったときは誰とも連んでいなかった羽生だが、気づけばクラスの男子とも仲が良さそうに話すようになっていた。
(男子にもモテるのか…)


夕飯調理の時間
「あれ?羽生くんは?」
葉月が同じ班のクラスメイトに聞いた。
「あれ、そういえばいないね。トイレとかじゃない?」
「ふーん…」
(料理の時間にいないなんて…どうしたんだろ…)
「で、カレーって何からやればいいんだっけ…?」
クラスメイトが固まっている。
「えっと、野菜切ろうか…ジャガイモの皮むかないと…えっとピーラーがたしか…」

「かして。」

頭上から声がした。

「羽生くん!どこ行ってたの?」
「ナイショ」
羽生はにっこり笑って言った。
「…?」