———葉月

羽生が口にした自分の名前が何日も耳から離れない。

(会話の中で出ただけなのに…)

(翔馬くんにだってずっと呼ばれてたのに…)

葉月は熱くなった頬を両手で抑えた。

(………)

自分の気持ちにはとっくに気づいている。
翔馬と付き合いながら羽生に惹かれてしまっていたことも、翔馬との関係にケリをつけた今は否定しない。
だが

———でも俺、今あんまり誰とも付き合う気ないんだよね

(はっきり言ってたし、実際フラれた子の噂も聞いたし(噂になるとか最悪))

(…羽生くんに付き合う気があるかないか以前に、今の羽生くんのスペックに追いつけてないけど…)

(…真面目男子だった頃がもはや懐かしい…)

——— かわいいな、荻田

(いや、あの頃からおかしかった…)

(沼が深すぎる…)