「…翔馬くん…えっと…昼間の彼はね…」

葉月はポツリポツリと話し始めた。

「最初は展覧会も楽しいって言ってくれてたんだけど…最近は“もっと高校生らしい遊びしようよ”ってよく言ってたの。ボウリングとかゲーセンとかかな。私、そういうの好きそうに見えるみたいだし。」

「………」

「でもね、私は私で“大学生で20歳なんだから、もっと大人っぽいデートしてほしいな”とか思ってた。」

「………」

「翔馬くんは歳下の従順な彼女としてだけ私を見てたし、私は歳上の大人な彼氏としてだけ翔馬くんを見てたんだよね。もともと家庭教師と生徒だったし。だから、お互い様なの。理想を押し付け合ってたから上手くいかなくて当然、て感じかな…って、展示見ながら考えちゃった。」

葉月は眉を下げて、笑ったようにも泣きそうなようにも見える表情(かお)をした。

「俺からしたら、男女問わず手あげるヤツは最低だけど、荻田はそうやって思いやれるんだから優しいよな。」
羽生が言った。

「全然、優しくなんか…」
葉月は首を振った。