「あぁ、これなら無償修理の範囲内で直りますよ。」
「ホントですか?良かった。」

メガネ店のカウンターで葉月は安堵していた。

「30分くらいかかりますので、番号札をお持ち頂いて店内でお待ちください。」
店員はメガネを持って奥の部屋に入っていった。

「30分くらいかかっちゃうみたい。羽生くんどっか行ってる?」
「や、店内見てる。なんか似合いそうなメガネ探してよ。」
「羽生くんて、視力いくつ?」
「両眼2.0。」
「…伊達メガネ探すの?」
羽生は頷いた。葉月は可笑しそうに笑った。

それから30分、二人はお互いにいろいろなメガネを合わせては意見を言い合った。

「20番の方〜」
葉月のメガネの修理が終わった。
メガネを受け取ると、葉月はすぐにかけて嬉しそうに羽生に見せた。
「このメガネ、気に入ってたから直って良かった!」
「あれ?メガネ苦手なんじゃなかった?」
「うん。苦手だったけど…羽生くんが似合うって言ってくれたからちょっと好きになった。だからこのメガネは気に入ってるの。」

「そっか、なら良かった。本当に似合ってるよ、かわいい。」
羽生は優しく微笑んだ。

(え…)

———“かわいい”って思ったら、タイプかな

バーベキューの時に羽生が言っていた言葉を思い出した。

(いやいやいや)

——— みんなかわいいよ

(あのときみたいなリップサービスでしょ。)

頭の中で頑張って否定してみるが、葉月の胸はドキドキと高鳴ってしまっている。