「えー!だっていつもエビフライとかハンバーグとか、すごく豪華じゃない?プロみたいな…」
「ほんとよく見てんな。」
羽生は少し驚いた顔をした。

「侑輔の弁当がすごいって。」
「ほんと!?葉月ちゃん良い人だね!美人だし!」
侑輔がニコニコしながら言った。

(葉月ちゃんて…これは確かにかわいい…)

「じゃあいつも付いてる手紙は?」
「ああ、あれは…」

「葉月ちゃん見たい?じゃ〜ん!」
侑輔が棚からファイルを取り出して、葉月の前に開いて見せた。
そこには手紙のようなものが一枚ずつファイリングされていた。

【6月2日 水よう日】
【今日のじしん作:ハンバーグ】
【ポテトサラダ】
【にんじんのグラッセ】
子どもの字で、お品書きのようなものが書いてある。
その横に「10点」「9点」「7点」という点数と
【ハンバーグはバッチリ!お父さんにもまけてない。ポテトサラダはきゅうりの水切りをもう少ししっかりできれば10点。にんじんはもっとていねいに切らないと、お客さんがガッカリする。】
と、大人の字で書いてある。

「晃一が点数つけてくれるんだよ。」
「え!すごい!」

(羽生くんて…)

「超優しい兄ちゃんでしょ?」
侑輔に言われて、葉月はうんうんと(うなず)いた。
「本当に優しいね。」

「パスタ冷めるよ。」

羽生はどこか照れ臭そうに話題を切り上げた。