「あれ、葉月バイト探してるの?」
教室で茅乃が言った。

「うん。買いたいものがあって…」
「えっ週1か2で土日NGって結構条件厳しくない?」
「だよね〜」
葉月は“やっぱり”という溜息を()いた。

「何?親に言われてんの?」
「え、あ、うん、そんなとこ。」
「コンビニが無難じゃない?」
「だよねー…」
コンビニのバイトが嫌だというわけでもないが、せっかくなら興味のある職種で働きたい。


「条件て、彼氏が出してんの?」
茅乃がいなくなると、二人の会話を聞いていた羽生が話しかけてきた。
「……うん…」
「メガネのこととかさ、そいつ大丈夫?」
「……優しい、よ…」
「ふーん。」
羽生はあまり信じていないようだ。

「荻田がやりたいバイトをやりたいようにやった方がいいと思うけど。その彼氏、そのうち服装とか行動にも口出してくるんじゃね?」
「…羽生くんには関係ないでしょ。」
「………」
「自分だってお弁当の子がいるんだから、あんまり他の女子のことに首つっこまない方がいいんじゃない?」
「お弁当の子…」
羽生はフッと笑った。

「そうだな、あんまり関心持ったら荻田、俺のこと気になっちゃうもんな。」

羽生はからかうように言った。
「…イケメンは自信満々でいいね。でもそんなことないから。」
葉月はツンとした口調で言った。