「…ドチラサマデスカ…」

バーベキューの翌日、登校した葉月は戸惑っていた。
隣の席の真面目なメガネの少年が、イケメン男子に変わってしまった。

「今さらメガネにあの髪型したらコスプレだろ…」
「まぁ…そうだけど…料理の本は…」
「しばらく読まない。」
クラス中の女子の視線が集まってしまい、いつものように料理の本を読んでいれば話しかける口実にされてしまう。

「…なんかごめんね…」
本当(ほんと)にな。」
葉月はしゅんと肩をすぼめた。
「俺が料理しなきゃ良かっただけの話だけど。」
「………」
羽生が自分を落ち込ませないようにしているのがわかった。

「そのうちみんな飽きるだろ。」

羽生の予想に反して、女子たちの興味は薄れる様子がなかった。

イケメンがいるという噂が広まり、休み時間のたびに他のクラスや他の学年の女子が羽生を見にきては黄色い声を上げていった。

授業中は存在感をうまく消していた羽生だが、妙にオーラが出て目立つ風貌になってしまったため、よく指されるようになった。しかも毎回スラスラと正解を答えている。
体育の時間も、今まではグラウンドや体育館の隅で適当にやり過ごしていた羽生だが、メガネが無くなったからか球技でも陸上競技でも、運動部顔負けの動きを見せた。