「羽生く〜ん」

二人の様子を見ていた女子たちが、周りに腰を下ろした。

「羽生くんと葉月ちゃんってよく話してるけど、二人って付き合ってるの?」
ストレートな質問が飛んできた。
葉月は首をぶんぶんと横に振った。
「全っ然!そんなんじゃないよ。」
「え〜そうなんだぁ!」
取り囲む全員が明らかに嬉しそうな顔をした。

「羽生くんて彼女いるの?」
「…いないけど。」
羽生は若干面倒くさそうにしながらも質問に答えた。
(…でもお弁当のかわいい子がいるよね…)
葉月は野菜を食べながら、心の中でつぶやいた。

「羽生くんてどういう子が好きなの?」
「うーん…」
羽生は少し考えてから、口を開いた。

「“かわいい”って思ったら、タイプかな。」

葉月は一瞬、羽生に「かわいい」と言われたことを思い出したが、弁当の「かわいい」相手のことも同時に思い浮かべて打ち消した。
「じゃあ葉月ちゃんはタイプじゃないね。葉月ちゃんは“かわいい”系じゃなくて、“きれい”とか“大人っぽい”って感じだもんね。」
女子の一人が牽制するように言った。
(はいはい、そうですよ。わかってます。)
葉月は自分を引き合いに出されたことに呆れながら、食事を続けていた。

「なんで?」

羽生が言った。

「え?」

「荻田、かわいいじゃん。」

「「え!」」

女子がざわめくのと同じくらい、葉月の心もざわめいた。
(何言っちゃってんの!?)