「え、おいし〜い!」
「プロの味じゃん!」
「やるなー」

羽生が焼いた肉や野菜を食べながらクラスメイトや先生が感嘆の声をあげた。
羽生は肉や野菜を焼きながら、あり物の材料で肉にかけるソースや野菜のディップソースまで作ってしまった。

「はい、荻田の分。」
「…ありがと。」
なんとなく羽生の側に近寄れずにずっと木陰にいた葉月に、羽生が肉と野菜の皿を渡した。
そしてそのまま、先ほどと同じように葉月の隣に腰を下ろした。

「…なんか…女子の視線を感じるんだけど…。」
「知るかよ。荻田のせいじゃん。」
「…こんなの予想できるわけないでしょ…。」
隣にいるイケメンが羽生だということが、いまだに信じられない。

「その顔で料理ができたら…そりゃぁモテるわ…」
「高校では静かに過ごしたかったんだけどな…。」
「そのセリフも嫌味に感じないくらい納得するよ…この反応…」
(たしかにさっきまではびっくりするくらい上手く真面目少年に擬態してた…)
葉月は感心すらしていた。

「で?」

羽生が葉月をチラッと見た。

「え?」

「感想は?」

「あ…料理の感想?…えっと、すごく美味しい…ってこんな感想ありきたりだよね。えっと…」

上手く感想が出てこない葉月に、羽生はいつになく柔らかい笑顔を見せた。
「いいよ、表情(かお)で伝わった。」

———たしかに感想は嬉しい、料理も

羽生の言葉を思い出した。
教室にいたのと同じ羽生だと感じて、葉月はなんとなく嬉しい気持ちになった。