「え…!ヤダって言ったのに…」

おばけ屋敷の前で葉月はかたまっていた。
「絶対行くって行ったじゃん」
翔馬は笑いを含んだ声で言った。
「はいはい!お二人さん!入口でイチャついてないでさっさと入って!」
翔馬の友人が強引に二人をおばけ屋敷に押し込んだ。

———バッ

「きゃっ…」

半分子ども騙しのようなおばけ屋敷だが、葉月はちょっとしたことに驚いてしまう。
「し、翔馬くん、私暗闇がダメなの…」
葉月は震えた声で言った。
「手ぇつないでてあげるから。」
翔馬は軽く言ったが、葉月は翔馬の手を握り、もう片方で腕にもしがみついていた。
「あ…そうだ、メガネ…」
少し広くなった休憩地点で葉月がメガネを取り出そうと翔馬の手を離そうとすると、翔馬が葉月の手を強く握った。
「え?翔馬くん?」
「メガネ好きじゃないって言ったじゃん。」
「え…?でも暗闇が…」
「手ぇつないでるじゃん?」
「あ、あの…おばけ屋敷から出たらメガネ外すから…」
「ダメだって。」

そう言うと、翔馬は葉月の顔を手でクイッと自分の方に向かせてキスをした。