「大きいのが可愛いんだよ。そう。これは歌沢くんだよ。昨日買ったんだ~」

「……疲れたマラソン大会の帰り道、わざわざ買いに行ったのかよ?」

「? うん」


本当は、マラソン大会の途中で買ったんだけどね――とは言わないまま。歌沢くん人形をなでなでする。

すると、声宮くんお決まりの舌打ちが聞こえた。「チッ」と。大きな音に、私の体がビクッと跳ねる。


「気に入らねぇ。好きでもない男の人形を引っ提げて、何が嬉しいんだか」

「え?私は歌沢くんの事、好きだよ?」

「……は?」

「ファンとしてだけど、わぁ!?」


最後の言葉は声宮くんに届かないまま……

ガシッと。私の腕が彼に掴まれ、強引に引っ張られる。その力が強すぎて、私は思わず目を瞑った。

次に目を開けた時。

思った以上に近い距離に、声宮くんがいた。その時の彼の目は……言うなれば、逆三角形。怒っている目だ。


「こ、声宮くん……?」

「……」