驚きで、何度も見てしまう。だけど見間違いじゃなかった。目をこすっても、頬を抓っても……。

私の運命の人は楽先輩だと――赤い糸が言っている。だけど、いやいや。今まで声宮くん、歌沢くんに引っ付いておいて、なにを。


「(まさか赤い糸が、こんなに頼りにならないなんて……)」


ドキドキ、たまに落胆。そんな移り変わりの激しい私を見て、優しい顔で微笑む楽先輩。


「(っていうか……さっきの楽先輩の言葉、
あれって、)」


――花畑さんが、すごく緊張してるって事は……。それだけ俺の事を意識してるって事でしょ?

――むしろ嬉しいよ。ありがとう


「(私の事を好き、みたいな……)」


いや、ないか。ないよね!

ハハハと見て見ぬふりをした感情に、思い切り目を逸らした私は――


案の定、楽先輩とケーキ屋に行った日に、赤面をする事になるとは。

この時の私は、思ってもみなかったのだった。