「め、芽衣って……」


デートは終わったのに、普通に名前で呼ぶんだ……。

少し気恥ずかしさを覚えていると「あること」に気づく。そう、赤い糸。


「(声宮くんの指から、赤い糸がほどけてる!)」


ビックリして二度見する。だけど何度見ても、声宮くんの薬指に赤い糸はなかった。この前はあんなにガッチリ巻きついてたのに……。


「(なんで……)」

「芽衣、何かあったのかよ」


私が真剣な顔のまま固まってるから、どうやら声宮くんは心配してくれたらしい。グイッと私をのぞきこむ。


「え、近……っ」

「調子悪いなら、マラソン大会は無理すんなよ」

「声宮くん……」


あれ?声宮くんが優しい。舌打ちとか、ため息が代名詞の声宮くんが……優しい!

まさかデートをした事により、あの声宮くんに変化が、


「走れねー奴がコースにいても邪魔なだけだからな。さっさと回れ右して家に帰れ」