*凌久*



俺は最近、ある事に悩んでいる。そのある事とは――


「ねぇ凌久くん、動画の最初にナレーションを入れてもらいたいんだけど」

「……」

「ねぇ、凌久くん!聞いてる?」

「……聞いてる」


ウソ。本当は全然聞いてない。そんな俺を見透かしているのか、目の前にいる芽衣は頬をぷぅと膨らませた。


「真剣に相談してるんだけど」

「真剣に聞いてるだろ」

「本当に……?」


動画を作ると発表した後、皆がホワイトボードの前で、何やら書き込みながらワイワイと騒ぐ一方。

ラウンジの椅子に座ったまま腕を組んでいる俺を、芽衣は不満ありげに見つめている。

かと思えば、俺の隣の椅子に「ヨイショ」と座った。その目は不安そうで、俺と一瞬だけ目が合っても、すぐに逸らされてしまった。


「なんだよ」