「(なにを!?)」


だけど病人に何を言っても、何を聞いても無駄だと悟った私。

ズルズルと凌久くんの腕の中から抜け出して、各部屋に設けられている救急セットの中を確認する。


凌久くんは救急セットに全く手をつけてなかったみたいで、風邪薬も未開封のまま。良かった、薬がなかったらどうしようかと思った。

ジャー、こぽこぽっ

グラスに水をついで、薬と一緒に凌久くんの元へ行く。「体を起こせる?」と言うと、凌久くんは気怠そうに半分だけ目を開けた。そして、ゆっくりと上体を起こす。


「はい、薬。口を開けて?」

「ん……」

「お水、ゴクンして」

「ん……っ」

「(良かった、飲んでくれた)」


ホッと息をつく。独断で飲ませちゃったけど、大丈夫だよね?私が一年の時に風邪を引いた時、寮母さんがしてくれた事を、そのまま真似したから……。


「これで、よくなるといいな……」