故障のため動かない、真っ暗なエレベーターの中。

エレベーターの中は広さがあるから、充分な間隔がとれるはずなのに……。

中学生の男子四人と女子一人、合計五人。

この五人が乗っていると、妙に狭く感じちゃうのは――きっと、


人数の問題よりも、ギスギスした空気のせいだと思う。


「おい。今、俺の足を踏んだ奴いるだろ?」

「俺じゃないよ~?」

「ぼ、僕でもありません……っ」

「俺も違う」


真っ暗の中、四人の声が響く。

その一つが、私に向かって舌打ちを飛ばして来た。


「チッ、じゃあお前かよ?」

「ち、違うよ……!」


急いで否定すると、今度は大きなため息をつかれた。

なんでため息!?と怒りたいのを我慢して、グッと口を閉じる。

我慢だ……。ここで反抗すれば、空気はもっとギスギスする……!

だから、


「(耐えて私!我慢だ……!!)」


私、花畑 芽衣(はなばたけ めい)。

ミディアムヘアで茶色の髪。目は大きいけど背が低いのが悩みの、どこにでもいる女の子。

元気いっぱいの中学二年生。今は学校の寮に通っているの。


そして、このエレベーターは、学校の寮のエレベーター。

今、一緒にいる男子四人は……