『あはは、人気者かな?』

笑う区長に、私は溜め息を漏らす。実は溜め息と見せかけた、彼の声への嘆息だが……嘘の需要は高い。

嘆息を溜め息に偽装することは、罪じゃないはず。

「それで区長、なんでしょうか」

『うん。実は次の粛正対象について、ちょっとね』

案の定の内容を、私は一気に脳内へインプットしていく。

粛正はいつまでも、あとを絶えない。

「区長、それは――罪ですか」

最後に訊ねると、彼は今までもそうだったように、わざとらしい一拍を置いた。

きっと、顎に手を当てているのか、空中に視線でも泳がせているのかしているのだろう。

『Bで言えば、これは罪だよ』

「そうですか。わかりました。それでは第十七番使徒、上野楓、対象を粛正します」

パチンと音を立てて、ケータイを閉じる。

秋空は、あまりに晴れ晴れとして青く、高かった。