電子音が聞こえて、私はポケットに手を入れた。

鳴っているのは私個人のものではなく、与えられた、シルバーのケータイ。

「はい。こちら十七番、上野です」

『あ、僕だよ』

阿吽の呼吸というのだろう。秒の間も空けず、彼が言った。その声音に、少し心が弾む。

私の二度の死を知り、私の再生を二度も見守ってくれた彼に、どうしようもなく惹かれる。

たぶん私は自己定義の証明の際に、加算したんだろう。

あまりに静かで凪いでいる心ではなく、誰かに恋焦がれる苦しさを。

「はいはい、こちら桜庭紅蓮でございますよ、教会さん」

「小名木もいるぞー」

「っ、二人とも……!」

と、通話相手を察してか、一緒にいた桜庭くんと小名木くんが左右から口を挟んでくる。

邪魔だ。通話にも、仕事にも、彼との会話にも。

私は二人を振り払い、距離を置いた。